酒にこころなどあるのか、ないのか。あれば知りたい。なぜそうまでして俺を酔わすのか。聞いてみたい。なぜ俺を酒の海へと誘うのか。深ければ深いほど視界が良好になっていく。何度おぼれたことか、あやうく命を落としかねないところまでいったこともある。
しかし酒を愛している。いや酒が好きではないな。酒を飲む俺自身が好きなのかもしれない。ただいつまでもつきあっていたい。カラダとココロが悲鳴をあげたとしてもつきあっていくつもりだ。だから教えてくれ、飲まずにいられないようになるのはなぜか。俺は馬鹿か。
リービング・ラスベガスのニコラス・ケイジのように酒を煽るように飲みながら死んでいくのは本望かもしれない。俺はアホか。上等だ。
いつものカウンターに座っていると隣に同世代の女性がやってきて、赤ワインのグラスを注文した。グラスを持つその指に俺はめくるめく欲望を抱いてしまった。一口飲むたびに口をつけたグラスをその指でぬぐっていた。俺はたまらずマスターにハイボールのおかわりを頼んだ。
3杯目のグラスは俺のノドを潤してすぐになくなった。これではいくらおかわりしてもすぐにノドが渇いてしまう。彼女のワインを飲むスピードはあきらかに遅かった。ただグラスを持つ指が美しい。爪の先までがしなやかな動きでたまに両手をきちんとグラスに添えて背筋をのばしている。所作が美しいと落ち着くのはなぜだろう。そんなことを考えていた。
すると彼女がふと俺のほうに顔を向けニコッと微笑んだ。俺はただ見つめていただけだった。
なんのリアクションもとれないまま固まってしまいどうしたらいいかわからず、またハイボールを注文した。
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